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個々のバレエ作品についての意見や感想など


by tomokovsky06

眠れる森の美女

color="#282828">私的作品観



  • 登場人物の色彩がとにかく豊か。貴族・平民・妖精・おとぎ話の主人公など、これでもかというくらい色々な人たちが出てくるのが楽しい。各バレエ団の衣裳を比べて見るのも楽しみ。

  • 音楽史上、美しいメロディーメーカーとして知られているチャイコフスキーだが、三大バレエの中でも一番たくさん陽性のメロディーがちりばめられているのがこの作品だと思う。 

  • とにかくダンサーの数が必要。それも群舞が揃っていればよいというものでもなく、それなりのソリストの質と数も必要。衣裳も色々な役のものが必要だし舞台装置も宮殿やら森の中やら大掛かり。ということではっきり言って「お金のかかるバレエ」。ある意味、この作品を上演できるかどうかでバレエ団が一流かそうでないか決まってしまうかも。(本当はそんなことでは決められないんだけど、でもある程度の人材と財力がないと上演できないことも確か。) 

  • それだけに人材もお金も決して豊かではないバレエ団が無理にこの作品を上演すると、かえって台所事情がまる見え、なんてことにもなりかねない。


color="#282828">過去の名演・迷演



  •  私のお気に入りはレニングラード国立バレエ版。このバレエ団は毎年年末年始に来日してチャイコフスキーの三大バレエは毎回上演してくれるが、最近の「眠り」の東京公演は1月下旬に定着しているようだ。元々はかなり上演時間が長い作品だが、ここの版は原典を守りつつもほどよくまとめてあるので上演時間はちょうどよく感じられる。コール・ドがよく鍛えられていることで知られているバレエ団だから、あらゆる場面での群舞が美しいのだが、それ以上に特筆すべきは女性ソリストの層の厚さ。プロローグの妖精や第3幕の宝石の精、フロリナ王女など、主役以外にも見せ場をたっぷり作れるダンサーがいるのがさらにお気に入り。衣裳のセンスも私好み。貴族はそれなりにゴージャスな感じだけれど派手すぎないし、妖精たちの衣裳はソリストもコール・ドもほどよくカラフルだけど嫌味がない。このバレエ団で私が一番好きなオーロラはシェスタコワだが、他にもエフセーエワ、クチュルクもそれぞれ持ち味があって好き。オーロラ姫をレパートリーとしているバレリーナは他のバレエ団にも数多くいるけれど、本当にお姫様をきちんと演じられる人は案外少ないもの。でもここのバレエ団は私が知っている限りでも3人も有しているのは実はすごいことかも知れない。

  • 英国ロイヤルバレエの「眠り」もお気に入り。舞台装置や衣裳に、ロシアのバレエ団とはまた違う荘厳さを感じる。

  • キーロフバレエが2000年の来日公演の際に「初演復元版」を上演したが、やはり疲れた…。20分、20分、25分の3回の休憩、つまり休憩時間だけで1時間以上あるわけで、開演から終演まで4時間以上にわたった。昔の人は優雅だったなあ…。もちろん見所はたくさんあったけど、平日の仕事帰りに見に行くものではないと思った。

  • …と思ったら、新国立劇場バレエが採用している版も(上記の初演復元版とは違うが)かなりの長丁場。こちらも3回休憩があるし、見る方はそれなりの覚悟で行かないとだめだと思った。個人的には、演出や振付をキーロフバレエに倣うのはいいとしても、金髪・銀髪の鬘まで真似しなくても…と思うことがある。役によってはもちろん鬘は衣裳の一部として大切なのだが、例えば1幕のワルツのコール・ドは金髪のおかっぱの鬘が似合う男性の方がはるかに少ない。(もしかして無駄な出費?)

  • 一方、東京バレエ団の版はカットしすぎ。特に王子役の出番が少ないので、せっかく王子にゲストを呼んでも、ゲスト目当ての観客はちょっとガッカリかも。1幕のワルツの男性コール・ドの衣裳も「味のないカールおじさん」みたい。まあ牧歌的な雰囲気は出ているんだけどね。団名に「チャイコフスキー記念」とついていてもチャイコフスキーの三大バレエを苦手とするバレエ団だと個人的には思っているが、その中でも眠りは一番このバレエ団には不似合いな作品だと思っている。そんな中でも女性がチュチュを着て演じるカラボスは珍しい演出。少なくとも私が今までに見た「眠り」でこういう演出はここのバレエ団だけ。とはいえ、今や女性カラボスの代名詞(?)と言ってもよい井脇幸江が退団したらやっぱりつまらないかも…。とにかく彼女のカラボスはすごい当たり役。他のダンサーのカラボスを見たことがあるが、同じ役とは思えなかった。

  • 熊川哲也率いるKバレエカンパニーが「眠り」を上演すると聞いたときはちょっと驚いた、というより心配した。「上演してだいじょうぶなの?」というのが正直な気持ちだった。見に行ったら案の定…。ソリストはそれなりにそろえたとは思うが、この作品のウリであるはずのゴージャス感が全然ないし、衣裳もこれ以上お金をかけられないから勘弁して~、という感じだった。でも熊川哲也の(恥を捨てた)チャレンジ精神には拍手。 


# by tomokovsky06 | 2005-08-23 00:00 | 眠れる森の美女